(1) 単相変圧器の励磁突入電流
単相の変圧器の方が、励磁突入電流は大きいといわれています。
変圧器 2 次側に負荷接続がある場合と比べ、無負荷状態での電源投入のほうが励磁突入電流は大きいといわれています。
三菱電機:三菱ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器 技術資料集
三菱低圧配電用モールド変圧器|励磁突入電流の大きさの例 … 19.表のデータは、無負荷時の励磁突入電流と思われます。
URL: http://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/catalog/lvcb/yn-c-0657/y0657e1609.pdf
60kVA の単相変圧器の励磁突入電流は、記載がないので推測しました。
単相変圧器容量 | 励磁突入電流/定格電流に対する倍率 |
---|---|
1kVA | 24 |
50kVA | 35 |
60kVA | 33 |
75kVA | 30 |
(2) 不平衡回路の相電流 ➡ 線電流に変換
変圧器の励磁突入電流(相電流)と線電流が違うため計算が必要です。
変圧器 2 次側の負荷の有無によって線電流は異なりますが、最も励磁突入電流が大きな「無負荷時投入」で計算します。
単相 50kVA(Iab) | 単相 60kVA(Ibc) | 単相 1kVA × 5 台(Ica) | |
---|---|---|---|
定格電流A | 113.6 | 136.4 | 11.4 |
励磁突入電流/定格電流倍率 | 35 | 33 | 25 |
励磁突入電流|絶対値 | 3,977 | 4,500 | 284 |
電流ベクトル | 基準 | 120°遅れ | 240°遅れ |
電流ベクトル|実部 | 3,977 | -2,250 | -142 |
電流ベクトル|虚部 | j0 | -j3,897 | j246 |
相電流〔A〕 | a 相 | b 相 | c 相 |
---|---|---|---|
ベクトル|実部 | 4,119 | -6,227 | 2,108 |
ベクトル|虚部 | -j246 | -j3,897 | j4,143 |
絶対値 | 3,873 | 10,124 | 6,251 |
計算結果:机上の計算ですが、励磁突入電流の最大値が 10,124A になります。
(1) 汎用配線用遮断器を使って、単相変圧器同時投入の場合
汎用の配線用遮断器 NF630-SW の瞬時引き外し電流の大きさは、定格電流の 11.2 ~ 16.9 倍とバラついています。
変圧器の励磁突入電流 10,120A ÷ 11.2 = 900A の遮断容量が必要になるので汎用配線用
遮断器は使えません。
(2) 三菱電機製 高インストブレーカを使って、単相変圧器同時投入の場合
励磁突入電流が 10kA 超えになるため「高インストブレーカ」が必要と考えます。
三菱電機 NF800-SEW 高インストブレーカの短時間引き外しは、定格電流の 4 ~ 15 倍で
調整ができます。
最大値の 15 で計算します。
励磁突入電流の最大値 10,124A ÷ 15 =675A 。
(3) 汎用配線用遮断器を使って、単相変圧器個別投入の場合
変圧器個別投入では、汎用配線用遮断器で励磁突入電流の保護協調は可能と考えます。励磁突入電流の減衰時定数が、交流波形の 4 ~ 5 サイクル
( 0.1 秒)です。汎用配線用遮断器の瞬時引き外し特性は、11.2 ~ 16.9 とバラついているので、最小値の 11.2 で計算します。
1kVA × 5 台の変圧器の励磁突入電流:38.8A ÷11.2 | = NF63-SVF | 定格電流 20A で保護ができます。 | |
50kVA の変圧器の励磁突入電流:3977A ÷ 11.2 | = 355A | NF400-SW … 定格電流 400A で保護ができます。 | |
60kVA の変圧器の励磁突入電流:4500A ÷ 11.2 | = 401A | NF630-SW … 定格電流 500A で保護ができます。 |
(1) 400V 配電用変圧器から制御盤間の配線保護協調
今回の計算では考慮していません。配線保護協調設計計算が必要です。
(2) ホットガス対策
400V 系の配線遮断器の遮断動作の際に遮断器電源側に放出される導電性のホットガスが発生します。
「アークスペース」(絶縁距離)の検討をお願いします。
投稿日 | 2017/12/08 (Fri) |
更新日 | |