【66693】3相トランス … の補足説明です。
あまり専門的に書くと商売がバレるので一般論を記載します。小職、本職は「お漬物屋」。ときどき「電気設備工事屋」なので、内容の信憑性は見る方の判断におまかせします。
結論からいえば、負荷損は正逆接続のどちらでも同じ損失が発生する。無負荷損は電圧の 2 乗に比例するが、無負荷損自体の値が小さいので変圧器の逆接続による電圧上昇分を加味しても無負荷損の値はあまり変わらない。よって、変圧器の逆接続による効率は正規の接続と比較してもあまり違わない。

変圧器の理屈

(1) 変圧器の等価回路
変圧器の高圧側が 1 次側の等価回路と低圧側が 2 次側の等価回路の比較 … 違いは励磁回路の位置

等価回路
r1 :1 次側巻線抵抗〔Ω〕
x1 :1 次側漏れリアクタンス〔Ω〕
r2 :2 次側巻線抵抗〔Ω〕
x2 :2 次側漏れリアクタンス〔Ω〕
g0 :励磁コンダクタンス〔S〕 … 励磁抵抗〔Ω〕の逆数
b0 :励磁サセプタンス〔S〕  … 励磁リアクタンス〔Ω〕の逆数

g0:励磁コンダクタンス〔S〕と b0:励磁サセプタンス〔S〕の電圧に対する変化を検証すれば、問題は解決できると考えます。

高圧側に電源を接続し低圧側を開放した場合の励磁電流と、低圧側に電源を接続し高圧側を開放した場合の励磁電流(無負荷電流)を比較すれば、
電圧と励磁の関係がわかります。

g0:励磁コンダクタンス〔S〕は、直流抵抗計で知ることができます。
b0:励磁サセプタンス〔S〕は、電流を電圧で割れば値を知ることができます。

励磁電流が、定格電流に比べて無視できる値かどうかを確認できればよいと思います。

励磁電流

(2) 電圧降下 … 変圧器の正逆接続の検証のための計算
V1 = E1 + r1・I1 + jx1・I1 … 1 次側電圧
V2 = E2 - r2・I2 - jx2・I2 … 2 次側電圧

起電力 E = 4.44 ×周波数 f ×コイルの巻数 n × 鉄心の断面積 A〔m2〕×最大磁束密度 Bm〔wb/m2〕〔V〕
変圧器の最大磁束密度は、約 1.8〔wb/m2〕なので、コイル 1 巻当りの変圧器の起電力は、鉄心の断面積〔m2〕による。
換言すれば、変圧器の電圧は鉄心に磁束をどれだけたくさん流しているかによる。

電圧降下の要因の r1 および r2 は、直流抵抗で変圧器の端子から測定できるが、x1 および x2 は変圧器の端子から直接測定できないので推測するしか方法がない。
電圧降下

(3) 漏れリアクタンスを考える … ここから、チンプンカンプン(※)の理屈
漏れリアクタンスは、変圧器の巻き方によって異なることがわかっている。専門的には「ロゴスキー係数」を使い計算します。

難しい理論は抜きにして、式の中に電圧要素がないので電圧と漏れ磁束は関係がないと考えるのが妥当。

巻線が同心配置の場合の漏れリアクタンス x = $ 7.9 \times \displaystyle \frac{ f \cdot m \cdot w^2 }{ q \cdot h } \times \Bigl(1-\displaystyle \frac{ 1 }{ \pi } \times \displaystyle \frac{ \delta + ⊿_{1} + ⊿_{2} }{ h } \Bigr) \Bigl( \delta + \displaystyle \frac{ ⊿_{1} + ⊿_{2} }{ 3 } \Bigr) \times 10^{-6} $

巻線が交互配置の場合の漏れリアクタンス x = $ 7.9 \times \displaystyle \frac{ f \cdot m \cdot w^2 }{ h } \times \Bigl(1-\displaystyle \frac{ 1 }{ \pi } \times \displaystyle \frac{ \delta + ⊿_{1} + ⊿_{2} }{ h } \Bigr) \Bigl( \delta + \displaystyle \frac{ ⊿_{1} + ⊿_{2} }{ 3 } \Bigr) \times 10^{-6} $

f :周波数〔Hz〕
m :1 次巻線、2 次巻線 の平均ターン長さ〔m〕
w :コイルの巻数
q :高圧コイルと低圧高圧の組み合わせ数。同心配列の場合は 1。
h :コイルの幅〔m〕
δ :高圧コイルと低圧コイルの間隔〔m〕
1 :高圧コイルの高さ〔m〕
2 :低圧コイルの高さ〔m〕
漏れ磁束

(※)チンプンカンプンの語源:中国語の「聴不憧看不憧(チンプートン、カンプートン)=聞いても解らない、見ても解らない」

巻線

(1) 同心配置のメリット
同心配列は、通常の変圧器の内鉄形に使用されている。鉄心に近い部分に低圧コイルを巻く。
最大の理由は、短絡時の電磁力に対して強いことがある。また、鉄心から高圧巻線を離すことにより鉄心の間に入れる絶縁体を小さくでき、低圧側を内側に置くと内側からの口出線の絶縁が少なくて済む。

(2) 交互配置のメリット
交互配置は外鉄形に使用される。メリットとして漏れ磁束を小さくできる。この場合も鉄心に近い部分に低圧コイルを巻く。

鉄心の構造

鉄心構造と漏れ磁束の関係性はないと思われるが、参考として記載する。

(1) 内鉄形鉄心
内鉄心のメリットは変圧器を小型化できるので、一般的に用いられる。各相の磁路長が異なるため励磁電流に無視できる程度のアンバランスが生じる。

内鉄形

(2) 外鉄形鉄心
各相の磁路が独立しているので 1 相が断線しても、△-△結線の場合、V-V 結線ができるメリットがある。
(今の時代、変圧器内の断線事故などほとんどない。また、変圧器の内部事故が起きても使い続ける時代でもない。)

外鉄形

効率

効率を測定するときに定格負荷をかけて、入力電力と出力電力を測定すればいいが、実際には定格負荷試験は難しい。
そこで損失を測定して、これを用いて計算する方法が一般的です。2 次側負荷電流 I2、2 次側負荷力率 cos φ のときの効率は、

η=  V2・I2・cos φ 
 V2・I2・cos φ+W0 + I22・r 
× 100〔%〕
V2 :定格 2 次電圧〔V〕
I2 :2 次負荷電流〔A〕
cos φ :2 次負荷力率
W0 :無負荷損失〔W〕
I22・r :負荷損〔W〕

(1) 無負荷損 W0
無負荷損は、鉄損+励磁電流による 1 次側の銅損+絶縁物の誘電体損であるが、鉄損以外は無視できるほど小さい。
鉄損はヒステリシス損と渦電流損からなる。いずれも電圧の 2 乗に比例する。

ヒステリシス損 Wh は周波数に比例し、最大磁束密度 Bm が 1〔T〕以下では Bm1.6 に比例し、Bm が 1〔T〕以上では Bm2 に比例するといわれている。汎用変圧器の最大磁束密度 Bm は、1.8〔T〕程度なので、鉄心重量あたりのヒステリシス損 Whは、

Wh=σh・f・Bm2 = k1  E2 
  f 
〔W/kg〕
Bm :最大磁束密度〔T〕
f :周波数〔Hz〕
E :起電力〔V〕
σh :ヒステリシス損係数
k1 :比例係数

渦電流損 We は、電磁鋼板の厚さ、周波数、磁束密度のそれぞれの 2 乗に比例するといわれている。
We =σe・t・f2・Bm2=k2・t2・E2 〔W/kg〕

σe :渦電流係数
t :積層鋼板 1 枚の厚さ〔mm〕
k2 :比例係数

(2) 鉄損曲線
鉄損曲線 … 新日鉄住金 カタログから引用 35Z145

鉄損

透磁率曲線

透磁率曲線
投稿日 2018/01/23 (Tue)
更新日  
 

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