SSR は動作時に半導体素子特有の残電圧やオン抵抗があるため、通電時に大きな電力損失が発生します。
(1) SSR の電力損失
交流用 SSR は、電流の開閉にトライアックを使用しているので、アノード~カソード間に残電圧が約 1.6 ~ 1.8V あります。
負荷電流が流れると、電圧〔V〕× 電流〔A〕の電力損失〔W〕が発生します。
DC 用 SSR は、MOS-FET を使用しています。MOS-FET は素子の ON / OFF をスイッチングするのでなく、ドレイン~ソース間の抵抗変化を利用した素子です。MOS-FET はオン時に約 200mΩ の残抵抗があり、負荷電流が流れると電流〔A〕2 × 残抵抗〔Ω〕の電力損失〔W〕が発生します。
(2) 負荷電流と電力損失の関係
電力損失は熱になるので、放熱器(ヒートシンク)の有無や周囲温度によって定格電流に制限がかかります。
定格電流 〔A〕 |
放熱器あり | 放熱器あり | ||
---|---|---|---|---|
40℃ | 80℃ | 40℃ | 80℃ | |
10A | 16W | 9.6W | 6.4W | 3.2W |
20A | 32W | 9.6W | 6.4W | 3.2W |
40A | 64W | 19.2W | 9.6W | 3.2W |
(3) 放熱器なしの電力密度
SSR の放熱が不十分のため素子が加熱し、SSR が破損することがあります。
W:4.3cm、H:5.8cm、D:2.7 ~ 3.0cm の SSR の表面積は、約 100cm2 です。この素子の電力密度〔℃/cm2〕は、
定格電流 | 40 ℃使用時の電力密度 |
---|---|
10A | 0.064 ℃/cm2 |
20A | 0.064 ℃/cm2 |
40A | 0.096 ℃/cm2 |
放熱器がない状態で、定格電流を流したときの素子の温度上昇〔deg〕は概ね下記の値になります。素子が焼け切れることはありませんが、
IV 線の絶縁物は溶けて短絡事故になります。
定格電流 | 電力密度 | 温度上昇 |
---|---|---|
10A | 0.16 ℃/cm2 | 144deg |
20A | 0.32 ℃/cm2 | 234deg |
40A | 0.64 ℃/cm2 | 280deg |
(4) 通過電流 2 乗時間積〔I2t〕
短絡電流によるジュール熱量は「通過電流 2 乗時間積」( I2t )で表します。半導体素子は通過電流 2 乗時間積は、短絡電流の通過電流 2 乗時間積と比べて非常に小さいので、短絡電流はすばやく遮断する必要があります。SSR 素子の短絡電流は交流半サイクル( 10ms )以下と短いため、通常の配線用遮断器では遮断できないことがあります。
同じトライアックを使った電力調整器のカタログには、通過電流 2 乗時間積〔I2t〕の記載はありますが SSR にはありません。しかし、限流ヒューズによる SSR の保護は必要だと思います。SSR の通過電流 2 乗時間積〔I2t〕の値は、カタログデータにないのでメーカに確認をお願いします。
(1) ヒートシンクの熱抵抗
熱回路の計算は、電気のオームの計算と同じなので難しくありません。
SSR 内部のトライアックの半導体部(ジャンクション)の定格温度は 150℃です。シリコン系の半導体の定格温度は、150 ℃もしくは 175 ℃です。
この温度以上になると素子が壊れるので、電力損失で生じた熱を熱交換器(放熱器)を使って大気中に放出する必要はあります。
トライアックの内部から大気間に熱が、すんなり流れてくれれば素子は効率よく冷却できるが、熱の通り道には熱流を妨げる熱抵抗が存在します。
熱抵抗には、
定格電流 〔A〕 |
Rjc 〔℃/W〕 |
Rcs 〔℃/W〕 |
放熱器型式 | Rsa 〔℃/W〕 |
合計熱抵抗 〔℃/W〕 |
---|---|---|---|---|---|
10A | 2.66 | 0.4 | (N50) | 2.80 | 5.82 |
20A | 1.99 | 0.4 | (N10) | 1.63 | 4.02 |
40A | 0.45 | 0.4 | (N150) | 1.38 | 2.23 |
定格電流 〔A〕 |
鉄板の面積 |
---|---|
10A | 20cm2 |
20A | 120cm2 |
40A | 300cm2 |
ヒートシンクの代わりに制御盤の中板(基板) SSR を取り付けた場合、中板のペンキや 1cm のマス目のペンキの厚み(μm )などがあって、
SSR の裏面の金属プレートと中板が密着しないため、更に広い面積が必要になります。
(2) 放熱面積-負荷電流特性
負荷電流によって電力損失が違うため、それに見合った放熱板面積が必要です。
負荷電流〔A〕∝ 電力損失〔W〕∝ 温度上昇〔deg〕は、比例関係にあるため放熱面積-負荷電流特性の傾きは温度に比例します。
(3) ヒートシンクの取付と冷却効果
ヒートシンクは、取付方向や位置によって冷却効果が異なるので、メーカ指定の取り付け方法を遵守します。
熱設計完全入門 実践編 国峰尚樹著|日刊工業新聞より引用
(4) 最後に、そんな話しどうでもいい「おまけ」
SSR の三相負荷接続で SSR が線間にある結線と、SSR が相間にある結線では高調波の含有量が違います。超~ヒマなときに計算します。
投稿日 | 2018/03/29 (Thu) |
更新日 | |