制御盤・配電盤の製作工数は、製作条件や盤製作メーカの営業戦略(営業マジック)によってその価格が異なる。
さらに制御盤・配電盤の製作は、一品一様で製作されることが多く、製作費の査定が難しく一律 10 %カットで査定することもあります。
何を持って適正価格かわからない状況では、まともな価格交渉ができないし、盤査定のデータベースも作れません。見積もり書に添付される盤製作内訳の部品リストから製作工数を算出するプログラムを作成しました。

盤製作の見積もり価格は、発注前のおおよその想定価格なので時間をかけて精査するのでなく、また根拠のない査定もよろしくありません。
迅速に査定するためのツールとして活用したいと思います。

製作工数査定プログラムの考え方

icon 制御盤・配電盤製作工数査定プログラム

制御盤・配電盤製作工数査定のパラメータとして、①部品の取付時間、②部品の取付時間を計算します。それぞれの作業時間に部品使用数量をかけた値を
積算します。

(1) 部品の取り付け時間
制御盤・配電盤の製作に使用する電気部品の取り付け方法は、① M ねじを使った取り付け、② DIN レールによる取り付け、③専用金具を使った取り
付けがあります。

部品取り付けの穴あけ作業は、盤を新規製作するため板金加工の段階で穴開けができている前提で、査定条件に含んでいません。

①M ねじを使用した取り付けは、部品の大きさや質量によって使用する M ねじの大きさを変えます。
いずれの場合も、盤基板(中板)の罫書き作業、穴あけ、 M4 以下はタップ立て、 M5 以上は貫通穴を開けてボルト留めの作業があります。
部品ごとに使用する M ねじの大きさと数量が決まっているので部品型式番号と一緒に登録します。
各作業のおおよその作業時間がわかっているので、それを積算して「工数表」のシートに登録しています。
「部品取り付け工数」として登録してあるデータは、当該マクロプログラムの動作確認のために入れた数値で実務の作業時間と異なります。

②DIN レールの取付は部品の大きさに関係なく、動作テストのため部品 1 個当たり 1 分で登録しています。(修正の必要あり)

③専用金具による取り付けは M4 ねじを使った取り付けが多いので、電動ドライバーを使った取り付け時間を登録します。
金具 1 点当たり 0.5 分を計上します。

(2) 部品の配線時間
主回路に使用する電線は、定格電流によって電線サイズを自動的に選択します。遮断器は、フレームサイズとトリップ電流(定格電流)があるので、
部品選定のときの定格電流を入力します。電技解釈第 146 条により電流減少率を補正するので、査定する盤の主回路数によって低減率を選定してください。回路数を変更するときは、マクロプログラムの「 Sub Assemby_Wire() 」 '組立工数および工数表を計算する' のプログラムで変更します。
マクロプログラムのプロシージャ内「主回路配線サイズの計算」で工数表から読み出す列を指定してください。

(3) 電線サイズと配線時間の関係
建築設備の電気工事における配線工数は、お金を出せば工数情報を入手できます。しかし、制御盤の配線工数の入手は不可能なので自分で考えなければなりません。
現在入手が可能な建築設備の電気工事の配線工数を数件調査しました。結果、電線サイズ( 1m 当たりの質量)と作業工数は(ほぼ)比例しています。
制御盤の配線作業と電気設備工事の配線作業は作業条件が全く違うため、電気設備工事の作業工数を制御盤配線作業に流用することはできません。
しかし、作業条件は異なるが制御盤の配線作業時間も電線サイズに比例すると考えられます。

「工数表」の電線 1m 当たりの作業時間は、制御盤配線+圧着処理を含んだ作業工数を記載しています。計算式は、企業秘密のため計算結果を記載しています。必要に応じて修正をお願いします。

(4) 作業工数の呼び方について
部品 1 個当たりの取付作業時間および配線時間を「かけ」といいます。歩掛の単位は「にんにち」で表します。人日は「にん」という名称でも呼ばれます。人日は、作業者 1 人 一日 8 時間の作業量で、歩掛の作業時間と実際の作業時間は異なります。

電気設備工事の歩掛の作業時間には、

建築電気設備の電気工事の場合、現場での実作業時間の約 3 倍を 1 工数として取り扱う場合が多い。
制御盤製作工数も概ね 3 倍の時間を 1 工数として取り扱っているものと思われます。
当該プログラム計算では、実作業時間の 3 倍を 1 工数として計算しています。

(5) その他の査定要素
制御盤・配電盤の査定で必要なパラメータが欠如していれば、FA 屋の掲示板に記載をお願いします。
現在わかっているパラメータは、

人工の少ない盤では、実作業に比べて前段取りや後作業の比重がやや多く、人工が多い盤では前段取りや後作業の比重がやや少なくなります。
マクロプログラムでは反映させてないので「鉛筆をなめて」手修正をお願いします。

Excel シートの構成

(1) Sheet1:部品表
制御盤製作に使用する部品を登録します。現在登録している部品データは、当該マクロプログラムの機能確認のために登録したものです。
実態に即していない内容もあるので各自で加筆・修正をお願いします。

データを追加するときは、部品表適当な箇所に「行を挿入」して、部品データを書き込みます。
メインタブ「開発」 → リボン上の「マクロ」 → マクロ名「部品表_Sort 」を選んで実行してもらえれば、コード順に部品の並び替えをします。

【部品表の項目】
  項目 部品検索 使用目的  
A列 コード      
B列 部品名      
C列 型式番号    
D列 メーカー名      
E列 機能      
F列 仕様(相数など)      
G列 電圧〔V〕      
H列 容量〔VA〕      
I列 定格電流〔A〕   電線サイズの自動計算に使用
J列 部品点数   工数計算に使用
K列 選定中   部品選択すると「選定」になる
L列 コメント&特記事      
M列 取付ビス径   部品取付工数の計算に使用
N列 ビス数量   部品取付工数の計算に使用
O列 質量〔kg〕   部品取付工数の計算に使用
P列 主回路電線断面積〔mm2〕   配線工数の計算に使用
Q列 主回路電線長さ〔m〕   配線工数の計算に使用
R列 主回路電線本数   配線工数の計算に使用
S列 制御回路電線断面積〔mm2〕   配線工数の計算に使用
T列 制御回路電線長さ〔m〕   配線工数の計算に使用
U列 制御回路電線本数   配線工数の計算に使用
V列 取付時間   自動計算 部品1個当たりの取付時間〔分〕
W列 配線時間   自動計算 部品1個当たりの配線時間〔分〕
X列 組立工数   自動計算 選択部品の取付時間〔分〕
Y列 配線工数   自動計算 選択部品の配線時間〔分〕

(2) Sheet2:査定条件|非表示
部品ごとの電線の長さと本数を入れています。各部品ごとに電線の長さと本数を入れていくのは大変です。
メインタブ「開発」 → リボン上の「マクロ」 → マクロ名「入力補助」を選んで実行してください。コードに合致する部品の配線長さと本数を部品表に転記します。必要に応じて部品表、または査定条件のデータを変更してください。

部品の配線に使う電線は、基本的に 2 次側配線のみを計上します。基本は部品 1 点当たり 1m としています。
遮断器はブスバーから分岐することを考慮してブスバーの分岐分( 1m )を加え、遮断器 1 個あたり 2m を計上しています。

角型集合灯は盤の扉に取り付けることが多いので、角型集合灯は灯数に応じた配線本数を登録してください。
(集合灯のみ配線長は計 2m となります)テスト用の部品データは、角型集合灯のデータを登録していませんので各自で登録をお願いします。

(3) Sheet3:電線サイズ|非表示
配線に使用する電線サイズは、電流の大きさによって自動で選定します。配線用遮断器や漏電遮断器は、フレームサイズとトリップ電流(定格電流)があります。部品を選択のときに定格電流を入力すれば、電技解釈第 146 条の係数を使って電線サイズを選定します。
テストプログラムでは、工数表の主回路を 5 回路の場合のデータを読み取るようにしていますが、盤の回路数に応じて読み取る列を指定してください。プログラムを変更する箇所は、マクロプログラムの「 Sub Assemby_Wire() 」 → '主回路配線サイズの計算 ' で列選択を変更してください。

(4) Sheet4:工数表|非表示
重量補正は、部品質量に応じた工数を自動で選んで工数計算に反映させます。現在、プログラムテストのための仮工数を入れています。
必要に応じて修正をお願いします。

(5) Sheet5:集計シート
部品選択が終われば、部品表にある「工数計算」のボタンを押したとき、部品選択中のデータを集計シートに転記して工数を自動計算します。

製作工数査定プログラムの操作説明

本プログラムは、ディスプレイサイズ( 1920 × 1080 )を基準に画面設計をしています。
FHD よりも小さな画面で見たときにイラッとするかもわかりません。ごめんなさい。

(1) Excel シートを開きたとき
部品表の書式を整えるかを選択する。「はい」を選ぶと部品選択および遮断器の定格電流、部品個数が削除される。
データー選択中のモードを保存して、再度部品選択を継続するときは「いいえ」を選択する。
初期化

(2) 部品選択
B2 のセルが「部品選択モード」のとき、該当する部品の行をクリックすると行の色が変わる。
選択部品が配線用遮断器および漏電遮断器の場合、「定格電流」を入力した後、部品個数を入力する。
行が網掛けの状態( K 列:選択表示)のとき、該当する行を再度クリックすると選択を解除できる。
部品選択

(3) 部品選択モード停止
部品表の行を追加したり削除・修正するときに使います。B2 セルをクリックすると「部品選択モード」から「選択モード停止」に切り替わる。
選択モード停止の状態で部品表の行をクリクしても何も選択できません。B2 セルを再度クリックすると部品選択モードに戻ります。
部品選択モード停止

(4) 部品型式のあいまい検索
C2 のセルにカーソルを当てると、セルの色が「黄」 → 「白」になり、あいまい検索モードに切り替わります。
型式番号の頭数文字を入力するとあいまい検索の部品候補を絞り込んでいきます。あいまい検索モードを解除するときは、C3 セルの「部品検索モード
解除」のボタンをクリックしてください。
部品検索モード解除

(5) 集計シートに転記する
部品選択が終了すれば E2 セルの「工数計算」ボタンをクリックしてください。選択した部品が集計シートに転記されます。
転記された部品の工数を自動で積算して「部品組立工数」と「配線工数」に表示します。
また、主回路配線断面積〔mm2〕の列に主回路の電線サイズと Q 列に長さ、R 列に本数が表示されるので配線の使用量の概略がわかります。
集計シートに転記

(6) 集計結果をファイルに保存
当該 Excel プログラムを適当なファイルに格納してください。「集計シートに保存」ボタンをクリックすると Excel データを格納している
フォルダにファイル名(件名)を付けてデータ保存されます。
集計結果をファイルに保存

以上、ご意見、ご要望は FA 屋の掲示板に掲載していただければ助かります。

投稿日 2018/08/01 (Wed.)
更新日  
 

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