FA 屋の会議室の掲示板はいろいろな情報が集まって非常に勉強になります。暇を持て余して過去の掲示板を見て気になったことがありましたので解釈を追記させてください。気になった点は 8 点あります。※長文なので各題目にリンクをはっています。

FA 屋の会議室|過去の掲示板の蛇足説明です。

【 65592 】400V 30kW のファン始動中に漏電が発生する。

トラブルのキーワードは、「誘導電動機の始動時に漏電リレーが誤動作する。」
原因は低力率負荷の電源投入時の電圧不平衡が原因と考えられます。電源電圧に不平衡が発生すると零相電流が流れることが知られています。

(1) 400V 30kW の三相誘導電動機の始動力率は、45 ~ 50 %と低い
低力率負荷に三相電源を投入すると、三相の投入電圧のレベルが違うために「非対称電流」が流れます。非対称電流は「非対称短絡電流実効値」と
いい、直流電流分を含んでいます。その大きさは、
$ Isa = \sqrt{ \Bigl( \displaystyle \frac{As}{ \sqrt{2}} \Bigr)^2 + Ad^2} \\ $

Isa :非対称短絡電流実効値
As :交流分
Ad :直流分

実効値とは、直流電圧および直流電流のポテンシャルエネルギーを持った交流エネルギーなので、直流と同じ計算ができるのが特徴です。
非対称短絡電流実効値を求めるには、As (交流実効値)と Ad (直流)を単純に足せば済むことですが、わざわざ 2 乗しものを平方根にして
います。これは、交流実効値電流と直流電流分が同じ方向に向いていない(元々交流と直流が同じ向きのはずがない)。

平衡電源不平衡負荷の電流計算式はたくさん見るが、不平衡電源平衡負荷の計算式はほとんど見たことがありません。
三相とも交流実効値電流と直流重畳部の大きさが異なり、ベクトル和が違うため 各相の電流位相角は 120 °ではありません。
このため零相電流が発生します。なお、3 相電流ベクトルは誇張して描いています。
投入ベクトル

(2) 400V 30kW 三相誘導電動機の始動電流は約 400A。
誘導電動機の負荷がファンのため始動時のイナーシャーが大きいため、大きな始動電流が長い時間流れます。
漏電電流の定格 30mA ÷ 400A ≒ 0.75 %。 0.0075 %。始動電流の 0.0075 %の零相電流が流れば、漏電リレーが働きます。
配電の分野では三相電源の不揃い投入はたびたび発生していますが、動力主回路に 30mA の漏電リレーなど入っていないので問題になることはありません。Pumpkin にいわせると明らかに設計ミス。ペナルティーものですね。
投入係数

【 65668 】DC24V の運転準備電源 OFF を行うとソレノイドバルブが一瞬 ON して、バルブが動く。

(1) 直流ソレノイド駆動回路の誤動作
直流ソレノイドをオン・オフするので逆起電力防止のため常識的にダイオードを入れます。いろいろなメーカの技術資料に直流ソレノイドの逆起電力防止用のダイオードは、電源オフ時の電流でオフ動作が遅れることが記述されています。またこの遅延対策も併せて記載されています。
直流ソレノイド

【 65441 】三相インバーターの直列接続したい。

(1) 三相インバータを駆動させるために単相インバータで三相電力を作りたいとの投稿です。
三相インバータの電圧だけをとらえるとこのような発想になるんでしょうね。電力的に考えれば、単相電力=電圧×電流。
三相電力=√3 ×電圧×電流。単相インバータで三相インバータを駆動させようとすると、1.73 倍の大きさの単相インバータを用意しなければなりません。

単相全波整流回路の直流電圧の大きさは、2×√2 ÷π×交流実効値≒0.9 ×交流実効値になります。
三相単相全波整流回路の直流電圧の大きさは、1.35×交流実効値になります。単相全波整流回路の直流電圧値は三相全波整流回路直流電圧値の
66 %しかありません。トルクは、電圧の 2 乗に比例するため三相 200V 駆動時と比べて 44 %のトルクになります。

要するに三相誘導電動機を思ったように制御しようとすると、単相インバータの容量は、三相インバータの容量の 2.2 倍の大きさが必要になります。
それよりも、三相電力を引っ張ってきたほうが施工費も安いし安全でしょうね。
三相インバータ

【 65426 】2000A 以上の銅バーの電流密度が知りたい。

銅バーの電流密度は、Pumpkin ホームページの「銅ブスバーの許容電流について考える 2018年05月05日 (Sat.)」に記載しています。

【 65314 】PDF 編集の図面を修正したい。

(1) PDF ファイル形式の CAD データを修正するには、フリーソフトの「 Inkscape 」を使います。
※最新版は、窓の杜から Download をお願いします。
Inkscape は、Illustrator や Visio と同じドロー系の作画ソフトです。PDF 化した CAD データを紙で持ってくる人はいないので、PDF 電子データを Inkscape で読み込ませます。線も曲線も文字も SVG ファイル形式で読み込みますので、Inkscape 上で図面修正はできます。

Visio は PDF ファイル形式のデータを読み込む機能はなかったと思います。修正後の図面データを SVG ファイル形式で保存すれば、他の CAD で読み込むことができます。高い金を出して Illustrator や Visio を買わずにフリーのソフトで十分仕事ができると思います。

【 65238 】設備動作のタイミングチャート作成したい。

(1) 上の書き込みと同じです。
Pumpkin のホームページの挿絵は、回路図やグラフやアニメーションなどすべて、Inkscape で作成しています。
Inkscape で原画を描いて、PNG ファイル形式で html ファイルに貼り付けています。Microsoft の Excel のグラフは、PNG 形式しか取り出せませんが、LibreOffice Calc は、グラフを SVG ファイル形式で出力できます。このデータを Inkscape で読み込んで、線の色や太さを修正しています。Inkscape を使っていて作業上、困ったことはないですね。

【 65383 】制御盤の絶縁抵抗測定をするときインバータなどの機器を外すのか。

(1) 通常は、制御盤内のパワーデバイス機器は外さずにそのままメガをかけます。
交流瞬時値は実効値の√2 倍なので、200V の機器では 280V になるので、250V で絶縁測定をします。400V の機器では 500V で絶縁測定をします。
これで壊れるようでは運転の保証はできませんね。ちなみに絶縁抵抗計の接地極側が(+)、プローブ側が(-)ですが、極性を意識することなく絶縁測定をおこないます。(交流機器なので極性は無関係です)

【 65151 】2 系統の電源に対して電源ランプ 1 つに電源を印加した場合について。

(1) ここの議論はおもしろいですね。感心します。
A 系統および B 系統のいずれも接地系であればランプは点灯します。

ランプ回路

(2) 変圧器とダイオードについて
なぜ、ダイオードを付ければランプが点灯するかその発想がわかりません。200V 回路もしくは 400V 回路にそのまま電球を取り付けるわけでないので、電源ラインとランプの間は何らかのトランスが介在するはずです。トランスの 1 次側にダイオードを取り付けると「片偏磁」になります。
この状態でトランスの 1 次電源を入り切りすると、片偏磁の上に「片励磁突入電流」が発生し、2 ~ 3 回トランス電源を入り切りするだけで、
トランスは過電流でお釈迦になります。トランスの 2 次側にダイオードがある場合は、励磁電流が交互に切り替わるためダメージは片偏磁よりも
小さくなります。
片偏磁

投稿日 2018/08/17 (Fri.)
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