(1) 送電系統の落雷と電圧降下
送電系統に落雷があると系統に異常電圧が発生し、避雷器が作動して系統電圧は一瞬低下します。瞬停もしくは瞬低です。
電圧降下の継続時間は通常、交流半サイクル以下。長くても交流 1 サイクル以下。短い電圧降下でリレーがオフするかを調べてみます。
(2) 交流用リレーや電磁接触器は、くまとりコイルがないと交流電圧 0V 付近で電磁力がなくなります。
交流電源は半サイクルごとに 0V があるため、コイルの電磁力が 0 になります。これを防止するために鉄心の一部に「くまとりコイル」を取り付けます。くまとりコイル側の磁束の位相を遅らせることによって、電磁石全体の吸引力が 0 にならない工夫をしています。
交流用電磁石の吸引力は、交流波形の 0V 付近で消勢するほど電圧変化に敏感です。
(3) コントロールリレーおよび瞬間停電耐量
オムロン社の MY4 のカタログ定格値によれば復帰電圧は定格電圧の 30%以上。「確実に復帰させるためには、この値以下としてください。」との
注記があります。
性能表には「動作時間」「復帰時間」とも 20ms 以下とあります。50Hz の交流の場合、10ms ごとに 0V になるので動作遅れ時間が 20ms で
あれば、くまとりコイルを取り付ける必要はないはずです。動作時間および復帰時間は、直流用リレーを含めた値と思われます。
コントロールリレーとは異なりますが、電磁接触器の瞬停耐量
形名 | 最大瞬停時間 〔ms〕 |
---|---|
S-N10 ~ N18 | 1.4 |
S-N20 ~ N35 | 1.4 |
S-N50/N65 | 40 |
S-N80/N95 | 30 |
S-N125 | 30 |
S-N150 | 30 |
S-N180/N220 | 40 |
S-N300/N400 | 50 |
(4) 残留磁束の吸引力の減衰
くまとりコイル側の磁束は、若干遅れ位相のためコイルの電源電圧が喪失しても残留磁束として鉄心内に残ります。
残留磁束は可動鉄心を吸引すると同時に、くまとりコイルの抵抗により熱エネルギーとして放出され減衰していきます。
くまとりコイルの位相差の計算がかなり難しくて、なんでこうなるの??というもので、計算式を間違ってサイン波減衰で計算してしまいました。
くまとりコイルの抵抗値やコントロールリレーの磁気回路の値がわからないので、吸引量減衰の正確な計算はできません。
言えることは、製品のばらつきはあるものの 1ms の短時間の電圧喪失でも、リレーを含めた電磁開閉器の消勢が起きる可能性があるということ
です。
(5) 補足説明
わかりにく説明で申し訳ございません。電流と磁束の関係を一言。電流変化が小さいとところでは発生する磁束も小さく、電流変化が大きいところでは、磁束も大きくなります。
このため、電流と磁束が電気角で 90 度ずれたようになります。
残留磁束は変圧器だけの問題でなく、電源をオフしたがリレーがオンしたままの「残磁」も残留磁束の一種と考えています。
電圧降下がどのタイミングで発生するかはわかりませんが、少なくともコントロールリレーに関しては、電源電圧の 30 ~ 80%の間では電圧降下の
影響を受けます。電流波形が比較的高いところから急激に電流が減衰すると磁束が発生します。これを便宜上「残留磁束」と言いました。
なにせ、電圧降下から数 ms の時間の話なので無視できると考えています。
前にも申しましたが、電気という目に見えなものを「あ~だ、こ~だ」と考えるので、頭もハゲてきます。
カミさんいわく「しょーもないことを考えずに、さっさと風呂に入って寝ろ!」
投稿日 | 2018/09/20 (Thu.) |
更新日 | |