(1) 三相短絡電流早見表
三相短絡電流早見表は、三菱電機様配線用遮断器技術資料(以降:配線用遮断器技術資料)に記載があります。
早見表の区分は下記のようになっていますが、すべてのケーブルについて記述しているわけではありません。
(2) 配線用遮断器技術資料の三相短絡電流早見表は、
(3) 配線用遮断器技術資料の三相短絡電流早見表のグラフを数値化する
グラフ画像数値化ソフト(フリーソフト Graphcel )を使って三相短絡電流早見表の数値化しました。
小さな短絡電流(配線距離が長い領域)で読取りの数値に大きなバラツキがあります。
三相短絡電流早見表のオリジナルのグラフはペイント系画像です。それを Illustrator を使って PDF ファイルに貼り付けているので、
元図の解像度の粗さが読み取った数値のバラツキの原因になっています。ならば、短絡電流早見表を自作しようと考えた次第です。
(1) 短絡電流の計算は、
配電設備の短絡電流の計算は、インピーダンスマップを作成して、%インピーダンス法で計算するのが一般的です。
配線インピーダンスが〔Ω〕で示されることから「オーム法」で短絡電流を計算します。
以下は、三菱電機様配線用遮断器技術資料のデータを使って説明します。
(2) 電源インピーダンス( ZL )
電源の短絡容量を 1,000〔MVA〕としています。X/R = 25 です。これらの数値は NEMA 規格 AB1-1964 からの流用です。
一般的に使われている数値のためコメントの付けようがありません。この値を 210〔V〕におけるインピーダンス値に換算します。
電源インピーダンス: | 2102〔V〕 1000〔MVA〕 |
× 1002 × 100-2 × 103 = 44.1〔μΩ〕です。 |
インピーダンスの有効分と無効分の比率は XL /RL = 25。この値を角度に換算するとtan-1 ≒ 87.71〔deg〕になります。
インピーダンスの有効分( ZR )= 44.1〔μΩ〕× cos 87.71〔deg〕 = 1.7621〔μΩ〕
インピーダンスの無効分( ZX )= 44.1〔μΩ〕× sin 87.71〔deg〕 = j44.0648〔μΩ〕です。
電源インピーダンスは、配線インピーダンスと比較して桁が 3 つほど小さいので、電源インピーダンス( ZL )の値を無視して計算します。
(3) 変圧器の短絡インピーダンス( ZT )
短絡インピーダンス値は一般的には入手できません。変圧器の短絡試験を行うかメーカの試験成績から入手します。
今回の説明は「三菱電機様配線用遮断器技術資料」の値を用います。
変圧器の短絡インピーダンス他| Excel データ
電圧降下〔%〕と短絡インピーダンス〔%〕の違い
電圧降下は力率 1 の負荷で試験します。短絡インピーダンスの試験力率は、変圧器内の直流抵抗値と誘導リアクタンスで決まります。
試験結果の値に違いがあるので、電圧降下〔%〕の値をそのまま短絡インピーダンス〔%〕に流用することはできません。
(4) 誘導電動機の寄与電流
短絡系統内の誘導電動機は短絡事故直後、慣性で回っているので発電機となって短絡電流(寄与電流)を発生します。
寄与電流は電磁開閉器始動の誘導電動機のみ発生し、インバーター駆動の誘導電動機では寄与電流は発生しません。
誘導電動機の寄与電流は停電直後、残留磁束の影響で回転子の 1 回転目で発生します。
次の回転サイクル以降は、励磁電流と回転子の回転速度が同期するので、発電せず励磁電流も消滅します。
三菱電機様配線用遮断器技術資料では、誘導電動機の容量を変圧器の 80%で計算しています。おそらく配電盤・動力盤の短絡を想定した値です。
誘導電動機の%インピーダンスを 25%に設定しています。この値は大容量の誘導電動機の値で、小容量もしくは中容量の%インピーダンスは、
おおよそ 30 ~ 35 %程度です。誘導電動機はインバーター駆動が多いので、この値を無視して計算します。
寄与電流〔A〕= | 発電機の起電力〔V〕 電動機インピーダンス( ZM ) |
(5) 配線インピーダンス( ZW )
電線インピーダンスは、三菱電機技術資料や電線工業会の資料で若干の違いがあります。
今回の説明は「三菱電機様配線用遮断器技術資料」の値を用います。
配線インピーダンス他| Excel データ
(6) 三菱電機様配線用遮断器技術資料の三相短絡電流早見表と理論値の差異
三菱電機様技術資料のグラフを数値化して Excel で加工しました。同資料のグラフの数値は著作権があるため、数値データは本ホームページでは
公開できません。
理論式の早見表は、変圧器の短絡インピーダンスと配線インピーダンスのみで計算しています。
三菱電機様短絡電流早見表の計算パラメータに誘導電動機の寄与電流が入っていること以外に詳しいことはわかりません。
理論式のグラフも三菱電機資料と同じような短絡電流特性曲線を描いているので実用上問題はないと考えます。
短絡電流早見表のグラフは片対数で表示しています。
通常目盛りグラフに変更すると短絡電流の大きさは、配線インピーダンスの逆数に比例していることがわかります。
短絡電流〔A〕= | 1 変圧器インピーダンス( ZT )+配線インピーダンス( ZW ) |
(1) 短絡力率と直流電流の重畳
短絡回路の力率が悪い場合、短絡電流に直流電流が重畳することが知られています。
短絡電流に直流電流が重畳する原因は、変圧器インピーダンス( ZT )および配線インピーダンス( ZW )に誘導リアクタンスがあるためです。
書いておいて勝手なことをいうようですが、その理屈は、私には難しすぎて理解できません。
(2) 短絡電流の種類と保護協調箇所
(3) 非対称短絡電流係数表について … アメリカ電機工業会規格( NEMA )
直流分重畳の度合いを示しています。いったん Excel 化すればデータの使い回しができます。
非対象短絡係数の Excel データ
対称短絡電流実効値 (Is)
短絡電流は交流電流分と直流電流分とから構成されるが、このうちの交流電流分の実効値を「対称短絡電流実効値」という。
短絡電流計算法ではまずこの値を算出する。配線用遮断器( MCCB )あるいはヒューズを選定する場合には、この電流値以上の遮断容量値(電流値)を有したものを選定する。
非対称短絡電流実効値 (Ias)
交流電流分と直流電流分を含めた短絡電流の実効値を「非対称短絡電流実効値」という。直流分の値は、短絡発生時の電流位相(短絡発生位相)により変化し、さらに各相ごとに短絡位相は 120 ゜ずつずれている。このなかの最大位を示す直流分を含む非対称実効値を「最大非対称短絡電流実効値」という。回路の短絡力率がわかればそのときの係数(最大非対称電流実効値係数)を対称短絡電流実効値に乗ずれば算出される。
電線あるいは CT などの熱的強度を検討する場合に、この電流値を使用しこの値より許容値が大の場合が強度的に適合する。
最大非対称短絡電流瞬時値 (Kp)
非対称短絡電流瞬時値のうち、直流分と交流分の和の最大の電流瞬時値を示す。短絡回路力率により定まる係数(最大非対称電流瞬時値係数)を対称短絡電流実効値に乗ずることにより求める。この電流値は、短絡発生回路に直列に接続される機器の機械的強度を検討する場合に使用し、機器の許容電流波高値がより高ければ強度的に適合する。
3 相平均非対称短絡電流実効値
3 相回路では各相の非対称短絡電流の投入位相が異なるため、各相電流の直流分含有率が異なり電流値が異なっている。
そこで 3 相各相の非対称短絡電流実効値の相加平均をとり、これを「 3 相平均非対称短絡電流実効値」という。
短絡回路力率が分かればこれにより定まる係数(回目平均非対称実効値係数)を対称短絡電流実効値に乗ずることにより算出される。
配線用遮断器の遮断容量が非対称値で表示されている場合には、この電流値を使用しこれより大きい遮断容量(電流値)のものを使用する。
投稿日 | 2018/12/01 (Sat.) |
更新日 | |