零相リアクトルをなじみのある CT (変成器)回路に置き換えて考えれば、問題解決できそうです。

【67397】インバータ ノイズフィルタの効果 … の補足説明です。

零相リアクトル

(1) 零相リアクトル 2 次側開放 … 通常の使い方
1 次巻線の零相電流はすべて、零相リアクトルの励磁に使われるため、零相リアクトルの鉄損で零相リアクトルは発熱します。
このため、大容量のインバーターユニットにあまり用いられません。
零相リアクトル 2 次側開放

(2) 零相リアクトル 2 次側を短絡した場合
零相リアクトルの励磁回路の電流は、励磁回路のインピーダンス分と 2 次側インピーダンス(漏れリアクタンスと巻線抵抗)の反比例で分流します。
零相リアクトルの 2 次側インピーダンスは、0 に近いので、零相電流の励磁電流分はほとんどは、短絡巻線側に流れると考えられます。
このため、零相リアクトルのリアクトルは、1 次側インピーダンスおよび 2 次インピーダンスだけになり、零相リアクトルの励磁分の LA 値は小さく
なると考えられます。 … 零相電流の大半は 2 次側の短絡電流のジュール熱となって、零相リアクトルの機能を果たさないと考えられます。
零相リアクトル 2 次側短絡

(3) 零相リアクトル 2 次側にダンピング抵抗を挿入した場合
零相リアクトルのインピーダンスが、公表されています。4 個直列接続の場合は、インピーダンスを 4 倍します。
零相リアクトルの励磁電流は、零相リアクトルのインピーダンスとダンピング抵抗の逆比例になるので、零相リアクトルの LA 値は低くなると
考えます。その分、零相リアクトルの鉄損の発熱量は減ると考えられます。零相リアクトルの鉄損がわからないが、ダンピング抵抗の容量は 300〔W〕
と書かれています。この文面からすると零相リアクトルの鉄損は、100〔W〕前後あると考えられます。
零相リアクトル 2 次側ダンピング抵抗器

貫通型零相リアクトルの特性データは、製品の重要なパラメータなのでどのメーカーも公表しています。
メーカーは違っても、ダンピング抵抗による鉄損発熱量抑制の考え方はどこの製品も同じと考えています。
三菱電機のテクニカルニュースをみると、ダンピング抵抗の 4 個並列接続の合成抵抗値 13 Ωが紹介されています。
インピーダンス特性

おまけ 

(1) フェライトコアの機能イメージ

フェライトコアの個数を増やせば、通過する零相電流を抑制できそうですがそうでもなさそうです。
フェライトコアの選定で重要なパラメータは AL 値です。AL 値は磁気抵抗の逆数です。

AL 値=  透磁率 μ ×断面積 A〔m2〕 
磁路長 l〔m〕
〔μH/N2

フェライトコアの個数を増やせば、AL 値は低下します。フェライトコアの体積(断面積×フェライトコアの長さ l)が増えることによって、
フェライトコア 1 個あたりの最大磁束密度 Bm が低下します。

渦電流損の計算式は、Pe = フェライトコアの材質定数 ke ×(周波数 f ×波形率 kf ×最大磁束密度 Bm2 〔W〕です。

磁束密度の低下により渦電流損は 2 乗で低下します。フェライトコアの個数増加により発熱は抑制できるが、零相電流の通過が増えると思います。
メーカーの指定の個数を取り付けるのが無難だと思います。
フェライトコア

日立ファインメット資料
icon URL: https://www.hitachi-metals.co.jp/products/elec/tel/pdf/hl-fm3-k.pdf

三菱電機テクニカルニュース
icon URL: http://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/document/technews/inv/mf-h-134/mfh134c.pdf

投稿日 2019/02/16 (Sat.)
更新日  
 

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