(1) 高効率電動機の銘板に書かれていること
高効率電動機の定格は、4 定格で記載で記載されています。電動機は定格電流以下では、絶対に焼損事故を起こしません。
基準とするのは、銘板に書かれた 100 %負荷時の電圧・電流・効率・力率です。
電圧 〔V〕 |
周波数 〔Hz〕 |
50 %負荷 | 75 %負荷 | 100 %負荷 | 回転速度 〔rpm〕 |
トルク特性〔%〕 | 始動電流 〔A〕 |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
電流〔A〕 | 効率〔%〕 | 力率〔%〕 | 電流〔A〕 | 効率〔%〕 | 力率〔%〕 | 電流〔A〕 | 効率〔%〕 | 力率〔%〕 | 停動トルク | 始動トルク | ||||
200 | 50 | 14.26 | 88.3 | 63.4 | 17.63 | 89.3 | 75.6 | 21.55 | 88.9 | 82.4 | 1460 | 343 | 349 | 202 |
200 | 60 | 12.05 | 89.4 | 73.4 | 16.01 | 90.0 | 82.6 | 20.39 | 89.3 | 86.9 | 1750 | 298 | 279 | 174 |
220 | 60 | 12.34 | 89.0 | 66.1 | 15.60 | 90.2 | 77.4 | 19.24 | 90.1 | 83.0 | 1760 | 358 | 340 | 191 |
230 | 60 | 12.8 | 87.2 | 62.1 | 15.70 | 89.4 | 74.0 | 19.10 | 90.3 | 80.2 | 1765 | 388 | 372 | 200 |
(2) 三相誘導電動機の耐圧
論点は定格点。三相交流の場合は 200V または 230V。
高効率電動機をアメリカ規格の 240V 60Hz で運転したとき、電圧超過は定格電圧 230V に対して 1.05 以下で「領域 A 」以内です。
JEC 規格は、この程度の電圧上昇では電動機は焼損しません。
しかし、現場での使用は電圧変動や負荷変動を考えて、許容温度上昇限度以下になる電流になるように負荷選定をします。
定格補正電流〔A〕=( 230V の定格電流)× $ \Bigl( \displaystyle \frac{230V}{240V} \Bigr) $ に抑制すれば、許容温度上昇限度内になります。
固定巻線(エナメル線)の耐圧は 600V で、240V では絶縁破壊することはありません。
4.2.1 電圧
この規格の適用範囲に含まれる誘導機は、三相 50Hz または 60Hz で、JEC-158-1970 (標準電圧)の規定による公称電圧から採用した電圧に適合するものでなければならない。なお、インバータ電源により駆動される誘導機については、製造者と購入者の協議による。誘導機に対してこれらの定格電圧を採用する場合、配電および利用系統電圧の差異を考慮する必要がある。
10.1:運転中の電圧および周波数変動
誘導機は (1)、(2)のうち該当する項に記載した条件の下で運転することができなければならない。
領域 A 内の電圧変化および周波数変化に対し誘導機は、次の主要な定格値において連続的に運転して、実用上支障があってはならず、領域 B 内の電圧変化および周波数変化に対しては、次の主要な定格値で運転して実用上支障があってはならない。 なお、領域 B の境界線上とその近傍で長時間運転することは、奨められない。主要な定格は、次のとおりである。
(a) 誘導発電機:定格皮相電力〔kVA〕
(定格出力 10MVA 以上のタービン発電機を除く)
(b) 誘導電動機:定格トルク〔N・m〕
誘導機が多重定格電圧または定格電圧に範囲を有する場合、温度上昇限度(表 7.3 )は、
おのおのの定格電圧に対し適用する。
〔備考-01〕誘導機は、実際の適用や運転条件下では、時々領域 A の範囲を超えて運転されるが、この場合、持続時間や頻度が制限されるべきであり、温度による誘導機の寿命低下に対する予防策としては、出力を低減させることが考えられる。
〔備考-02〕温度上昇限度は、定格点で適用し、定格点から離れたところでは、規格の限度を
超える。この超過は、領域 A の境界部では、約 10K 以上となり、領域 B では、ほとんどの
場合領域 A よりも高くなる。
(3) 誘導電動機のトルク
トルクの大きさは、励磁電流と回転子巻線の電流の大きさに比例します。
温度上昇許容値内にするために、定格電流補正値〔A〕=基準電圧の定格電流〔A〕÷ | 新しい電圧〔V〕 基準電圧〔V〕 |
とする。 |
温度上昇許容値内にするために、定格電流補正値〔A〕=基準電圧の定格電流〔A〕÷ | 新しい電圧〔V〕 基準電圧〔V〕 |
とする。 |
三相誘導電動機の機械出力(トルク)は、すべり周波数 f の 2 次側電圧 sE20 × 2 次電流 I2 の積で決まります。
2 次電流〔A〕= $ \displaystyle \frac{ sE_{20}}{ \sqrt{r_{2}^2 + jx_{2}^2} } \hspace{32px} $ 2 次電流は力率 $ \ \cos \theta = \angle \displaystyle \frac{jx_{2}}{r_{2}} $ です。
2 次側の有効電流および無効電流を打ち消すために、1 次側からすべり周波数をもった有効電流と無効電流が供給されます。
少し難しい理論で「多相交流の定常化」というものがあります。平衡負荷に流れる電力は、周波数に関係なく一定になる理論です。
この理論のおかげで、三相電力=$ \sqrt{3} $ × VI × cos θという式で表され、この式には周波数成分は含まれていません。
すべり周波数を持った 2 次側電力も 1 次側から見れば、すべり周波数に無関係な三相電力 P2 =$ \sqrt{3} $ × VI × cos θという式で表されます。
エアーキャップのある回転磁界結合間の有効電流や無効電流の移動も「多相電力の定常化理論」で簡単に説明できます。
これにより 2 次側回路を 1 次側回路に置換した三相誘導電動機の T 形等価回路や L 形等価回路が簡単に計算できます。
(4) 電源周波数の違い
周波数が違うと励磁回路の誘導性リアクタンスの大きさが変わり励磁電流の大きさは、周波数に逆比例して変化します。
この理屈で考えれば、4 定格の 220V 50Hz や 230V 50Hz の計算は簡単に計算できます。計算で求めた電流値以下で運転すれば、誘導電動機は
温度上昇限度以下となって焼損することはありません。
周波数が異なると外扇の風量は周波数に比例して変わります。周波数が変わると外扇の風量が異なり許容温度上昇限度を超えて電動機が焼損すると
思っている人もいます。メーカは周波数の違いも織り込んでの負荷試験をしているので、銘板に書かれた定格電流を補正すればで電動機は焼損する
ことはありません。
スター結線では漏電遮断器がトリップして使い得ない趣旨の書き込みがあります。本当にそうでしょうか。
星形結線の電源で漏電遮断器がトリップして使えない理由が理解できません。なぜ使えないのか、理由が知りたいですね。
投稿日 | 2019/04/27 (Sat.) |
更新日 | |