電線並列接続時の容量 銀河さんの投稿で、「内線規程には条件が書いてある。概略は … 」
①インピーダンスが同じ値であること。同じサイズ、同じ電線、同じ長さであること。
「同じサイズ、同じ電線、同じ長さであること」が気になり調べてみました。結論は、この条件は正しいことがわかりました。

計算の条件

(1) ケーブル接続のイメージ図
A 導体および B 導体の電流は、各導体のインピーダンスに依存します。この考えにより導体のインピーダンス(公称断面積)の大きさによって
分流すると考えていました。電源電流は A ケーブルの許容電流値と B ケーブルの許容電流値の合計した値です。

A 導体の電流値〔A〕= 電源電流 × B 導体のインピーダンス Zb〔Ω〕
 A 導体のインピーダンス Za〔Ω〕 + B 導体のインピーダンス Zb〔Ω〕 
B 導体の電流値〔A〕= 電源電流 × A 導体のインピーダンス Zb〔Ω〕
 A 導体のインピーダンス Za〔Ω〕 + B 導体のインピーダンス Zb〔Ω〕 
ケーブル 2 条布設

(2) ケーブルの電気特性
電流分流の計算は、CV 3 芯ケーブルのデータを使いました。計算に用いるパラメータは「交流実効抵抗」と「誘導性リアクタンス」です。

【 600V CV 3 芯ケーブル電気特性】
公称断面積 許容電流 I 直流抵抗 r R:交流実効抵抗 L:リアクトル X:誘導性リアクタンス
50Hz 60Hz 50Hz 60Hz
〔mm2〕 〔A〕 〔Ω/km〕 〔Ω/km〕 〔Ω/km〕 〔mH/km〕 〔Ω/km〕 〔Ω/km〕
2 23 9.24 12.0 12.0 0.361 0.114 0.119
3.5 33 5.3 6.76 6.76 0.291 0.106 0.11
5.5 44 3.4 4.34 4.34 0.291 0.106 0.11
8 54 2.36 3.01 3.01 0.277 0.106 0.104
14 76 1.34 1.71 1.71 0.264 0.103 0.0994
22 100 0.849 1.08 1.08 0.261 0.101 0.0984
38 140 0.491 0.626 0.627 0.246 0.0976 0.0925
60 190 0.311 0.397 0.397 0.245 0.0931 0.0922
100 260 0.187 0.239 0.240 0.247 0.0906 0.0933
150 340 0.124 0.160 0.160 0.238 0.089 0.0897
200 410 0.0933 0.121 0.122 0.241 0.0885 0.0909
250 470 0.0754 0.0986 0.0996 0.236 0.0869 0.0890
325 555 0.0579 0.0771 0.0784 0.231 0.0864 0.0870

ケーブル 2 条布設の電流分布の計算結果

(1) 2 列ケーブルの電流分布 … 50Hz で計算した結果
横(行)が基底するケーブルサイズで、2〔mm2〕 ~ 325〔mm2〕あります。
縦(列)は組合せるケーブルサイズで、2〔mm2〕 ~ 325〔mm2〕あります。

例えば、100〔mm2〕のケーブルを基準とした場合、電流は 相手のケーブルサイズに関係なく 260〔A〕のはずです。
しかし、組合せるケーブルサイズによって、A ケーブルが過電流になったり組み合わせる相手のケーブルが過電流になます。
原因は、ケーブルサイズが小さいほど「表面電力密度」が大きいため、断面積当たりの電流密度〔A/mm2〕が大きいことによります。

2 本のケーブルを並行接続するときは、同じケーブルサイズしなければならない理由のひとつです。

【 600V CVケーブル 3 芯の組合せ電流の計算】
ケーブル〔mm2 B ケーブル〔mm2 2 3.5 5.5 8 14 22 38 60 100 150 200 250 325
許容電流〔A〕 23 33 44 54 76 100 140 190 260 340 410 470 555
A ケーブル 2sq A ケーブル電流値 23 20 18 15 12 10 8 7 6 5 5 5 6
B ケーブル 2sq B ケーブル電流値 23 36 49 62 87 113 155 206 277 358 429 489 574
A ケーブル 3.5sq A ケーブル電流値 36 33 30 27 22 18 15 13 11 10 10 10 10
B ケーブル 3.5sq B ケーブル電流値 20 33 47 60 87 115 158 211 283 364 435 496 581
A ケーブル 5.5sq A ケーブル電流値 49 47 44 40 34 29 23 20 17 16 15 15 16
B ケーブル 5.5sq B ケーブル電流値 18 30 44 58 86 115 161 214 288 370 441 502 588
A ケーブル 8sq A ケーブル電流値 62 60 58 54 47 41 34 29 25 23 22 22 23
B ケーブル 8sq B ケーブル電流値 15 27 40 54 83 113 160 215 291 374 445 507 593
A ケーブル 14sq A ケーブル電流値 87 87 86 83 76 68 58 51 44 41 40 39 41
B ケーブル 14sq B ケーブル電流値 12 22 34 47 76 108 158 215 294 379 452 514 602
A ケーブル 22sq A ケーブル電流値 113 115 115 113 108 100 89 79 69 64 63 63 65
B ケーブル 22sq B ケーブル電流値 10 18 29 41 68 100 152 211 293 380 455 518 606
A ケーブル 38sq A ケーブル電流値 155 158 161 160 158 152 140 129 115 109 107 107 111
B ケーブル 38sq B ケーブル電流値 8 15 23 34 58 89 140 201 286 376 453 517 606
A ケーブル 60sq A ケーブル電流値 206 211 214 215 215 211 201 190 174 166 164 165 170
B ケーブル 60sq B ケーブル電流値 7 13 20 29 51 79 129 190 277 369 446 510 599
✅ A ケーブル 100sq A ケーブル電流値 277 283 288 291 294 293 286 277 260 251 250 252 261
✅ B ケーブル 100sq B ケーブル電流値 6 11 17 25 44 69 115 174 260 350 426 489 575
A ケーブル 150sq A ケーブル電流値 358 364 370 374 379 380 376 369 350 340 338 340 351
B ケーブル 150sq B ケーブル電流値 5 10 16 23 41 64 109 166 251 340 413 474 556
A ケーブル 200sq A ケーブル電流値 429 435 441 445 452 455 453 446 426 413 410 412 423
B ケーブル 2005sq B ケーブル電流値 5 10 15 22 40 63 107 164 250 338 410 469 547
A ケーブル 250sq A ケーブル電流値 489 496 502 507 514 518 517 510 489 474 469 470 481
B ケーブル 250sq B ケーブル電流値 5 10 15 22 39 63 107 165 252 340 412 470 546
A ケーブル 325sq A ケーブル電流値 574 581 588 593 602 606 606 599 575 556 547 546 555
B ケーブル 325sq B ケーブル電流値 6 10 16 23 41 65 111 170 261 351 423 481 555

(4) もっと大切なこと
配電系統で短絡事故が発生したとき、短絡電流は電源からと負荷である誘導電動機の「寄与電流」が流れます。
このとき、電源電圧と誘導発電の電位が同じ大きさために A ケーブルに事故電流は流れません。
短絡時寄与電流は B ケーブルを介して事故点に流れます。

2 条ケーブル布設で短絡事故が発生した場合、短絡電流は B ケーブルを介して短絡電流が流れます。
配線用遮断器の短絡事故遮断電流の大きさは 1 条布設の短絡電流もしくは、2 条布設で同時に発生する短絡電流の大きさで選定します。

2 条布設ケーブルの 1 条当りの短絡容量は、1 条布設ケーブルの短絡容量よりも小さいのが一般的です。
このため、短絡電流が流れる B ケーブルの「保護協調」はできません。1 つの配線用遮断器に 1 条のケーブル接続が基本になります。

短絡事故
投稿日 2019/11/19 (Tue.)
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